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アート・デザインと人権 表現を考える【人種編】

東アジア人の顔つきをして、日本人であるというアイデンティティを持ち、日本語を話し、日本国籍を保持する人は、日本という国の中では圧倒的マジョリティです。

日本の法務省入国管理局によれば、平成28年度末における、日本に中長期に在留または永住している外国人(外国籍を有する人)の数は238万2822人で、日本の総人口に占める割合はおおよそ1.8%。めっちゃ少ない。

しかしその中に、日本人と外国人の親に生まれたいわゆる「ハーフ」と呼ばれる子供が日本で生きています。「ハーフ」と言っても、国籍は当たり前ですが様々です。韓国・中国などの東アジア系だけでなく、白人系、黒人系、ヒスパニック。肌の色や髪の色や質が違う人もたくさんいます。「日本人」イコール「アジア人の顔、肌の色」という前提もどんどん崩れてきているのです。そんな中でこんなCMがありました。

…「日本人の肌」って、何色?

この間、染髪禁止の高校で生まれつき髪の毛の色が明るい生徒が黒く染めさせられていたというニュースがありましたが、「日本人と言ったらこう!それ以外は違う」という考え方はナチスドイツの「純血アーリア人」を賞賛する優生政策を思い出させますし、女性、可愛い、ピンク!という短絡的に女性とピンクを結びつけたマーケティングも完全に時代遅れの広告だと感じました。

「日本人=ストレートの黒髪、黄味がかった肌、一重まぶたなど」という日本人像をすっかり信じてしまっている日本人を揶揄した動画があります。

「 But we're speaking Japanese! 日本語喋ってるんだけど」(http://www.kentanakalovesyou.com/)

レストランで注文をするために店員を呼んだグループ。白人男性が日本語で「すみません」と声をかけます。店員はテーブルにつく客を見回し、困り果ててしまいました。白人や黒人など、『外国人』だらけだったからです。

そこで店員はアジア系の女性に日本語で話しかけます。アジア系の女性は「ごめんなさい、日本語はわかりません」と英語で返し、周りの客が日本語でフォローします。

「オススメはありますか?」と日本語で聞く男性に、「ごめんなさい、英語はわからないんです」と店員が答えます。二進も三進も行かなくなり、結局アジア系の女性が、周りの友人たちから耳打ちされた日本語を片言で口にすることによって無事に注文することができました。

これを初めて見たときは一人で爆笑しました。一通り笑った後、そのあとスーッと背筋が凍るような感じがして、何にんかの友人や家族のことを思い出しました。忘れられない作品の一つです。

●「その顔で英語喋れないの?」

日本では、日本人と外国人の親を持つ人を「ハーフ」と呼ぶことが多いですが、その独特な呼び方は、HalfではなくHAFUとして日系人コミュニティの中で使われることもあるようです。

日本では「ハーフタレント」をテレビで見ない日はないというくらいに一般的な存在になりました。顔つきが『外国人』というのを自虐したお笑い芸人もいます。

そのノリを引き継いで、当事者以外が「え、ハーフなのに、その顔で英語喋れないの?」と揶揄し笑うのは、ある種の「イジリ」として定番化されつつあります。実際に私もそういうことをやっていた時期がありました。今では激しく後悔しています。

映画『ハーフ』予告編 Hafu: the mixed-race experience in Japan [Official Trailer]

●クリエイターも必要な、社会についての見識

日本に日本人としてのアイデンティティを持ちながら暮らしていると、忘れてしまいがちですが、アジア系は欧米諸国では圧倒的マイノリティです。

あなたはアジア系のハリウッドスターの名前を何人挙げられますか?

アジア系に対する差別も未だに根強く、元DeNAのグリエルがドジャースのダルビッシュ有投手に目を釣り上げ、アジア系を差別するジェスチャーをしたと報道されたのも記憶に新しいです。


記事の中で、多人種都市のニューヨーク在住の堂本かおる氏は、絵本に多彩な人種の子供が登場する理由として、『そうでなければマイノリティの子供に疎外感、引いては「登場しない者」としての劣等感を植え付けてしまうから』と指摘しています。それだけ絵本やテレビ、広告などは人に影響を及ぼすメディアであるということです。


欧米諸国では常に白人がメインキャラクター、映画も、絵本も、テレビも、広告も、ファッション誌も、白人で埋め尽くされていました。「今はそうではない」と言い切ることはできませんが、少しずつ意識が変わってきています。


黒人一家が主役のドラマや、メインキャストが全員黒人で白人はモブの映画や、中国系移民の一家のコメディ映画黒人のサンタさん日系人でレズビアンのシンガーにスポットライトが当たるようになってきたんですね。これらは、白人ではない自分の姿に似ている人を見つけ、ロールモデルとして生きていくことができる、きっかけとなり得るのです。




アジア系の見間違えようのない記号としての「吊り目」に対し、こう書いています。


『だが、この難しい人種の描き分けをきちんと行うのがプロのイラストレイターの仕事だ。「難しい」を言い訳に、「吊り目にさえしておけば」と誤魔化すのはもう止めるべきだ。そのためにはイラストレイターにも絵の技術だけでなく、社会についての見識が必要なのである。』




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武蔵野美術大学内でもやっと活動しているグループです。月一の映画会と週一のランチ会、ワークショップ、展示など。

​全人類歓迎。

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